About 陸修偕行社とは~目的と事業概要、これまでの歩み~
陸修偕行社とは
陸修偕行社は、令和6年4月1日に公益財団法人偕行社と陸修会(陸上自衛隊幹部退官者の会)とが、合同して誕生した公益財団法人です。
両組織は、陸上自衛隊に対する支援・協力を通 じて日本国の安全保障に寄与することを主な目的としており、両組織の持つ長所と短所を補い、より効果的・持続的に活動を行うため合同しました。
陸修偕行社の会員は、陸軍将校であった者及び陸軍将校養成過程にあった者、陸上自衛隊等を円満に退職した幹部自衛官等であった者、家族会員及びこの法人の事業を協賛・援助する賛助会員からなります。
この際、陸上自衛隊に幹部自衛官として勤務し、円満に退職した方の全てが、会員となります。
これは、全ての陸上自衛隊の幹部退職者が、心を一つにして、現職幹部自衛官を通じて、陸上自衛隊の充実・発展に寄与することが、今の陸上自衛隊に対する支援には、最も重要なものであるとの考えに基づくものです。
「陸修偕行社」の名称は、「陸修会と偕行社が合同したこと」「偕行社の良き伝統を引き継ぐ組織であること」を明確にするとともに、「古より国家防衛の最後の砦としての志を同じくするものが、現職幹部自衛官を支えるため、共に行動する会 (偕行) である」との意思を込めたものとなっています。
陸修偕行社の目的と事業内容
《目的》
この法人は、安全保障等に関する調査・研究・提言及び普及、陸上自衛隊等に対する必要な協力、英霊の慰霊顕彰及び自衛隊殉職者の追悼等並びに地域社会活動に対する協力等を行い防衛基盤の強化拡充を図り、もってわが国の平和に関する国政の健全な運営の確保に寄与することを目的としています。
<事業内容>
1 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行っています。
● 安全保障等に関する調査・研究・提言及び普及
● 陸上自衛隊等に対する必要な協力
● 英霊の慰霊顕彰及び自衛隊殉職者の追悼、戦没者の遺骨収集並びに自衛隊殉職者遺族の援護
● 地域社会活動に対する協力及び国内外の友好団体との交流
● 集会施設等の運営
● 図書等及び物品の販売
● 会員の研鑽と親交
● その他この法人の目的を達成するために必要な事業
2 前項の事業は、日本全国及び海外において行うものとしています。
History 偕行社と陸修偕行社の歴史
1 創設から終戦まで
明治10年(西暦1877)2月15日、当時約3000人に及んだ陸軍将校の一心同体を目指し、会合の場所として東京の九段上に集会所が設置されました。これが偕行社の創立であり、実に西南戦争の僅か前の出来事です。
後に各師団所在地にも偕行社が拡充されていきました。その結成は、現在の陸上自衛隊幹部の「修親会」や航空自衛隊幹部の「幹部連合会」と同じように、陸軍将校の修養研鑽と団結が主な目的でした。
「偕行」の意味は「共に軍に加わろう」ということで、詩経・無衣の篇・第3章(BC900~BC700)の次の漢詩から採用したものといわれています。
修我甲兵(鎧、打ち物、うちそろえ)
與子偕行(二人でいこう その時は)
あに衣なしといわんや(着るものがないと言うものか)
なんじと裳を同じくし(君とズボンを共用してでも)
王ここに師を興さば (王が軍を発起すれば)
我が甲兵をととのえて(自分の鎧と兵器を整えて)
なんじと偕に行かん (君と一緒に行こう)
(昭和初期の偕行社)
偕行社は、このように陸軍の部隊駐屯地外の集会所としてスタートし、将校たちの会費によって運営され、財団法人として発展してきました。
また各地の偕行社は宿泊施設を備え軍装品(礼装等の制服類、軍刀、拳銃等々)などを販売し、自衛隊における共済組合のような機能も発揮し、更に大阪や広島の偕行社においては、附属中学校や小学校まで経営し地域子弟の徳操にも務めていました。
しかし、偕行社は敗戦によって解散を余儀なくされました。
2 戦後の偕行社発足から平成まで
平成13年から、主として陸上自衛隊の幹部自衛官であった有志を正会員に加え、新たな偕行社へと向かう事が決まりました。
平成19年には、「戦没者及び自衛隊殉職者の慰霊顕彰」及び「自衛隊殉職者遺族の援護」などを新たな事業とした防衛省と厚生労働省の共同所管の「財団法人偕行社」となりました。
その後、公益法人制度の改革(平成20年12月1日)に伴い、平成23年2月1日をもって、従来の「慰霊顕彰」などに「安全保障等に関する研究と提言」及び「自衛隊に対する必要な協力」などを新たな事業として加え、活動の幅を拡大するとともに、内閣府所管の「公益財団法人偕行社」に移行しました。
昭和63年にこの建物土地を売却し、九段の社屋(千代田区九段南4-3-7、翠ビルの2・3・4階を借用)へと移転しました。平成26年には2階部分を返還し、3階と4階の2フロア体制となりました。
(戦後、多くの会員に親しまれた五番町会館)
昭和63年にこの建物土地を売却し、九段の社屋(千代田区九段南4-3-7、翠ビルの2・3・4階を借用)へと移転しました。平成26年には2階部分を返還し、3階と4階の2フロア体制となりました。
(平成期を支えた九段・翠ビル)
3 平成から令和における変革
(1)平成30年における偕行社の課題と改革への着手
当時の偕行社は、元幹部自衛官にその運営が任されており、まもなく元幹部自衛官のみの組織になろうとしていましたが、陸軍の元将校が高齢化により退会するなか、偕行社を継承すべき元幹部自衛官が平成30年をピークに逐年減少するとともに、毎年三千万円を超える赤字が継続するなど、このまま推移すれば、概ね二十数年で資産が枯渇し消滅せざるを得ないという課題を抱えており、事業のあり方、その組織や態勢などについて、抜本的な改革を進める必要に迫られておりました。
一方、陸上自衛隊は、防衛予算などによる人的・物的制約に加え、憲法上の制約により、軍隊としての地位を与えられておらず、そこから派生する多くの重要な課題を抱えながら、わが国防衛の任務を遂行することが求められており、昨今の厳しい情勢などを踏まえれば、今まで以上に元幹部自衛官による強力な支援が必要になると考えられました。
このような情勢を踏まえ、明治・大正・昭和に亘るわが国の近代国家建設の過程において、陸軍の中核として国家存亡にかかわるわが国の枢要な軍事の任にあたられた戦前の偕行社の役割と良き伝統を継承して、陸上自衛隊の現職幹部自衛官を支え一体となって陸上自衛隊が抱える諸制約・課題の解決を支援して、わが国の防衛に貢献していくべきとの結論(偕行社の在るべき方向)に至り、陸上自衛隊に対する支援をその活動の中心において活動する更なる新たな偕行社として存続させることとして、偕行社の改革に着手しました。
(2)偕行社の在るべき方向に基づく財務状況に見合ったコンパクトで効率的な更なる新体制への移行
事業及び組織・運営の効率化・合理化による収支均衡予算による事業の実施に努めるとともに、陸上自衛隊が抱える安全保障上の諸課題を支援し、あるいは解決に向け政治や国民に広く周知することを目的として、定款を変更し、『安全保障等に関する調査・研究・提言及び普及、陸上自衛隊等に対する必要な協力、英霊の慰霊顕彰及び自衛隊殉職者の追悼等の陸上自衛隊に対する支援を重視した活動』を令和4年4月1日から開始しました。
しかしながら、元幹部自衛官の一部の有志が継承していることから、陸上自衛隊の現職幹部自衛官や元幹部自衛官の殆どは偕行社の存在や役割を知らず、あるいは偕行社を陸上自衛隊の元幹部自衛官の組織として認識していないため、陸上自衛隊との一体感に乏しく、元幹部自衛官の会勢の拡大は難しい状況であり、伝統と基盤はあるものの、その入会促進が捗らないなど存続に係わる課題を抱えていました。この課題を解決し、陸上自衛隊に対する支援を継続していくためには、『偕行社を陸上自衛隊の幹部退官者の組織として陸上自衛隊のなかに永続させること』が不可欠と考え、その対応に苦慮しておりました。
(3) 会員に支えられた持久力のある更なる新体制への移行
ア 陸修会の設立
そのようななか、現下のわが国を取巻く安全保障環境を踏まえ、我々陸上自衛隊幹部退官者は、より一層、陸上自衛隊、特に現役幹部自衛官を組織的に支援していく必要があるとの認識の下、陸上自衛隊、特に幹部自衛官を通じての必要な協力及び支援を行うことで、陸上自衛隊の発展に寄与することを目的として令和4年4月27日に陸上自衛隊幹部退官者の会(設立総会において「陸修会」と命名された。)が設立されました。
この陸修会は、発足して間もないため、資産及び組織力などがまだ十分ではないものの、陸上自衛隊の幹部退官者全員が会員となる会員制度を採用しており、将来的に発展することが見込まれていました。なお、陸修会の細部につきましては、第4項「陸修会の設立」を参照ください。
イ 陸修会との合同
陸修会との合同(陸修会に偕行社を組織的に継承して貰うこと。)は、それぞれの組織の長所と短所を相互に補完し、偕行社は陸軍将校から引き継いだ組織を陸上自衛隊の幹部退官者の組織として永続させることができ、一方陸修会は組織を効率的・常続的に運営することが期待でき、両組織は新たな陸上自衛隊の幹部退官者の会として、陸上自衛隊を支援しその発展に寄与していくという双方の目的を達成することができるとの認識に至り、令和4年8月から陸修会と概ね1年間9回に及ぶ合同協議を経て、令和5年8月「令和6年4月1日をもって偕行社と陸修会は合同すること。」について合意し、同年10月6日ホテルグランドヒル市ヶ谷において、多くの陸上自衛隊の現職幹部自衛官及び幹部退官者並びに法人・個人賛助会員の参加のもと、「合同表明会」を開催して両組織の理事長による合同合意書への署名に引き続き合同の合意について内外に公表しました。
なお、この合同協議におきまして、合同後の名称については合意を得るまでに多くの時間を費やしましたが、偕行社と陸修会が相互の特性を活かし『両組織により合同した新しい組織であるとことが、陸上自衛隊の現職幹部自衛官はもとより幹部退官者に広く認識される名称』及び『偕行社の良き伝統を引き継ぐ組織であることが、家族・賛助会員含む陸軍関係者等に認識できる名称』の二つの要素を含ませるべきとの認識を共有するに至り、合同後の名称は、『陸修偕行社』とすることで合意されました。
ウ 陸修偕行社への移行
明治10年陸軍の現役将校の親和・研鑽を目的として設立され、明治・大正・昭和にわたるわが国の近代国家建設の過程において、国家存亡にかかわるわが国の枢要な軍事の任における柱石としての役割を果たすなど輝かしい歴史と業績をもつ戦前の偕行社の良き伝統を継承する偕行社が、陸修会に継承され令和6年4月1日から『公益財団法人陸修偕行社』という陸上自衛隊の幹部退官者の組織として、幹部自衛官を通じての各種の支援・協力により、現職幹部自衛官と一体となって陸上自衛隊の発展に努めていくことになりました。
なお、陸修偕行社は、公益財団法人として、陸修会との合同を踏まえて改正された偕行社の定款等に定める目的及び全ての事業並びに「陸上自衛隊幹部退官者全員に開かれた会」、「全会員に魅力ある会」及び「陸上自衛隊の現役に役立つ会」との陸修会の会運営の基本理念を引継ぎ、同定款等に基づき組織・運営されることになりました。
エ 社屋の移転など
令和3月8月、翌年令和4年4月1日の更なる新たな偕行社への移行に先立ち、靖國神社近傍の九段の旧社屋から防衛省近くの四谷坂町の新社屋に移転しました。
令和6年4月には「公益財団法人 陸修偕行社」への移行に伴い、事務所表記も変更いたしました。
4 陸修会の設立
令和4年4月27日に「陸上自衛隊幹部退官者の会」設立総会が開かれ、同会において会の名称は「陸修会」と決定されました。
「陸上自衛隊幹部退官者の会(陸自RO会)」設立趣意書
警察予備隊創設から約70年、そして東西冷戦が終焉して約30年が経過した。この間、陸上自衛隊は、我が国の平和と独立を守り抜くため日々練磨に励むととともに、その当時の我が国を取り巻く国内外の防衛環境に的確な対応をし、我が国の防衛に大きな役割を果たしてきた。
そして、現下の我が国の防衛を取り巻く環境は、中国、北朝鮮、ロシアなどの周辺諸国の情勢やいつ発生するか予断を許さない大規模地震をはじめとする大規模な自然災害、さらには少子化時代における隊員確保など、これまでにないより一層厳しい状況となっている。また、一国のみで我が国の防衛を遂行することが困難な時代にあっては、米軍をはじめ諸外国の軍人との安全保障対話、防衛交流もより重要性を増している。
今後も陸上自衛隊が、このような状況に引き続き的確に対応し、その役割を果たし続けるためには、陸上自衛隊退官者もこれまで以上に、退官者としての役割を果たすべき時代が到来していると考える。
一方、現状において、自衛隊の活動を支援する退職者の組織には、自衛隊退職者からなる「公益社団法人隊友会」、海上自衛隊の退官者からなる「公益財団法人水交会」、航空自衛隊の退官者からなる任意団体「つばさ会」があるものの、陸上自衛隊の退官者のみをもって組織する全国的な会は、存在していない。
そもそも、日本でも有数の規模を保持し、かつ我が国の防衛という極めて重要な任務を遂行する陸上自衛隊という組織に退官者組織がないこと自体が不自然であり、加えて、現下の状況を踏まえると、陸上自衛隊の退官者が、組織的に陸上自衛隊を支援すべき時代が到来していると言える。
この際、統合運用の時代にあって行動中の部隊等への全般的な激励・支援については、「隊友会」を中心として既に行われていることを踏まえた場合、陸上自衛隊の退官者組織として果たすべき役割とは、陸上自衛隊のことをよく知る幹部退官者が一丸となって現職幹部自衛官への協力・支援を行い、もって陸上自衛隊の発展に寄与することと考える。
また、諸外国軍との更なる連携や防衛交流の強化を考えれば、幹部自衛官退官者にあっても、現役軍人と現役自衛官の交流と同じ様に、諸外国の退役将校との交流を深めて現役を支援することは、その必要性を増している。
さらに、現在迎えている「人生百年時代」にあって、本組織が、会員相互の研鑽の場を提供することにより、幹部退官者が活き活きとした活動を行うことは、現役幹部の目指すべき魅力的な指標になるものと考える。
以上のことを踏まえ、今回、「陸上自衛隊幹部退官者の会」(陸自RO会:Retired Officersの会)を設立するものである。
なお、本会の効率的かつ常続的な運営のため、既に一部の陸上自衛隊幹部退官者が、入会している「公益財団法人偕行社」との合同を目指す。